第51章 西部調査
「―――――あ、ペトラ。」
「あっ、ナナさん。」
「どうしたの?眠れない?」
「はい、やっぱり少し怖くて。」
ペトラは私のほうへ歩み寄り、隣に腰を下ろした。
「―――――そうだよね。私も………平気なフリしているけど、やっぱり怖いもん。」
「―――――ナナさんには、リヴァイ兵長がいるじゃないですか。」
ペトラのその表情は、笑っているものの微々たる敵意を含んでいた。
この表情は知っている。
何度も見て来た、リヴァイ兵士長に焦がれた女性が私に向ける顔だ。
「―――――リヴァイ兵士長にハッキリ言われているよ、自分の身は自分で守れって。任務遂行や、兵団そのものが最優先だから、そこに私情はないよ。私も、それが当たり前だと思ってる。」
「――――………ごめんなさい。八つ当たりです……。」
「……ううん。」
そこから2人で肩を並べたまま、何を話すでもなく夜空を見上げた。
冬の冷えた静かな空気の中、自分の鼓動だけが聞こえる。明日また、私は生きていられるのか。リヴァイさんは―――――みんなは。
いつか私がもっと熟練の兵士になったら、この時間が当たり前になって何も思わなく過ごせる日が来るのだろうかと想像してみるけれど――――――きっとそんな日は来ない。
自分一人が死ぬ覚悟ならできるかもしれない。
でも、大切な人達を失う怖さはきっと増していくばかりなんだろう。