第50章 悋気
絶対に泣かない。
愛している人にふらふらされて、泣きたいのはリヴァイさんのほうなのに、私がどの面を下げて泣けるのだろう。
それでも容赦なく涙腺をじわりと登って来る涙を、必死に零れないように堪える。
「だから見限れと言いたいのか?」
「…………。」
肯定も否定も出来なかった。
「―――――純真で無垢だからお前を愛してるわけじゃない。」
「――――……。」
「お前が俺に言ったんじゃねぇか。曖昧に俺を遠ざけようとするのは、了承できねぇ。卑怯だろうが。」
「………で、も……。」
「でもじゃねぇ。自分で選べ。お前はどうしたい。」
「…………。」
「こうして抱き合ってキスして、想いを……身体を重ねる。それを繰り返しながら―――――共に生きていく。それをやめるのか、続けるのか、だ。」
「…………。」
「選べ。」
「…………。」
やめたいはずがない。
ずっとずっと恋い焦がれたこの人の目に私だけが映ればいい。
なのに、その私は他の誰かを映そうとするなんておかしい。赦せない、こんな自分が。
なのに抗えない。
ハンジさんは、エルヴィン団長だから仕方ないと言うけれど、私は自分の心の弱さがそうさせているんじゃないかと、一番自分を疑ってしまう。