第49章 夜会
部屋に着いてドレスを脱ぎ、メイクを落とすためにシャワーを浴びてから私服に着替える。
そういえばあの謎の男性は私の腰に目をやって、意味ありげなことを言った。身体をひねってチラリと腰に目をやると、そこには赤い唇の後が残されていた。
「………リヴァイさん……!」
見えないところならいいよなと言っていた、まさか腿だけじゃなかったなんて。
顔を赤らめていると、部屋のドアが鳴った。
「―――――ナナ。ワインを持ってきた。」
「はい。―――――今日はランプは点きましたか?」
私がくすくす笑いながら訪ねると、エルヴィン団長は眉を下げて笑った。
「意地悪だな。今日は――――点いたよ。」
エルヴィン団長もまた、洗いざらした髪でラフな私服のまま、ワインと少しのチーズ、ナッツを持って私の部屋に入った。
真紅のワインがグラスの中を滑る。
部屋の小さなランプに照らされて、キラキラと輝いた。それを口に含むと、葡萄の芳醇な甘みと渋みが口の中に広がる。
「――――それで、バルコニーで何があった?」
「はい、実は――――」
私はエルヴィン団長に、あの謎の男性の事を話した。エルヴィン団長は少し考えて口を開いた。
「王宮に忍び込めるほどの手練れの暗殺家業者か、もしくは王政が飼っている暗殺部隊でもある中央憲兵か、だろうな。おそらく後者のほうが可能性が高い。」
「中央憲兵……?」
「ああ、おそらくね。近い内に会うと言うのが、気にはなるが――――。」
息を呑んだ。国を動かす中枢が当たり前のように暗殺部隊を抱えているのか。
「――――ナナに近付いた真意はわからないが、また我々の前に現れるだろう。気を引き締めなければね。」
「………はい。」
私たちは重い空気の中でグラスを傾けた。
しばらくして、ワインが私の張りつめていた神経を和らげ、身体が熱く、心が開放的になってきた。
私は別の話題を切り出した。