第49章 夜会
「―――――お心遣い感謝します、ライオネル公爵。ですが部下の体調管理も私の仕事です。あとは私が良きようにしますので、ご安心を。」
ほんの少し、ダミアンさんの目に陰りが見えた気がした。
「……ほらナナ、おや、歩けないか?」
―――――それは歩けないふりをしろということだろうか。
私は咄嗟にふらついて見せる。
エルヴィン団長もまた口元に隠しきれない笑みを浮かべて、私の身体を抱き上げた。
「―――――では部下の体調が思わしくないので、不躾ながらここで失礼致します。」
エルヴィン団長は私を横抱きにしてダミアンさんに頭を下げると、フロアを後にした。そのまま馬車に乗り込み、扉を閉めた途端にどちらからともなく吹きだして笑った。
「―――――いやナナ、素晴らしいアドリブの演技だったな。」
「エルヴィン団長こそ……何が『本心を隠すのが下手』ですか。隠し過ぎて本心を見失っている、の間違いじゃないですか?」
「言うね。さては酔っているな?」
「―――――かもしれません。」
「もっと酔わせたい。部屋に戻ったら一杯付き合わないか?」
「―――――なにもしないと約束してくださるなら。」
「はは、しないよ。今日の反省会といこうじゃないか。」
「はい。」
なにやら楽しい雰囲気の中、馬車は走り続け、気が付けば王都の端の宿まで私たちを送り届けてくれていた。