第49章 夜会
「―――――ウォール・マリア奪還作戦の折には、調査兵団の多大なる助力があり助かりましたよ。感謝しています。」
「いえ。悔しくも奪還には及びませんでしたが、先の壁外調査報告でも上げたとおり、巨人の討伐により個体数減は見られました。この機にさらに調査を進め、来たる日の奪還につなげたいと、そう思います。」
「頼もしいですね。これからも共に人類の為に最善を尽くしましょう。」
腹の底を見せない、上辺だけの会話が続くことがとても怖い。私はどう振る舞っていいのか分からず、ただ薄く微笑んだ顔を貼りつけていた。
その時、仕掛けたのはエルヴィン団長だった。
「――――おやナナ、頬が赤い。酒を飲んだのか?」
「はい、少し。」
私の頬を人差し指で軽く撫でる。
「君は酒に弱いんだから気を付けなくてはいけないよ。」
エルヴィン団長の言葉に、ダミアンさんが反応した。
「―――――随分大事にされるのですね。ただの補佐官と団長の間柄ではなさそうだ。」
「―――――参ったな、そう見えますか?私は本心を隠すのが下手で。お恥ずかしい。」
どの口が言うんだろう。
本心など見せたのは数えるほどじゃないか。そう思うと、口元が不謹慎にも笑ってしまう。
「何を笑う、ナナ?酔っているんだろう。」
「ふふ。―――――かもしれません。」
「―――――部屋を用意させようか。休んで行きますか?ナナさん。」
ダミアンさんの申し出が想定外だった。
断ったほうが良いのか、何かを探れる機会としてその提案に乗るべきか。悩んだ挙句、エルヴィン団長が兵舎を発つ際に言った言葉を思い出した。
『何かあればその大きな瞳で私を見上げてくれればそれでいい。私が守ろう。』
その言葉に従い、私はエルヴィン団長のタキシードの袖を少しつまんで、困ったように蒼い瞳を見上げた。
エルヴィン団長はすぐに察してくれた。