第49章 夜会
「あれから気になっているのですが――――――ロイが社交界に出なくなって、何か歪みは―――――不穏な動きなどは、ないでしょうか………。」
ずっと気になっていた。ロイが手に入れたものの中には、とんでもなく多くの人の人生を左右するものもある。
ロイが“表舞台を去ります”だけで納得されるわけがないと。
何か出て来る、きっと。
父も理解していて、その歪みから手放さなければいけないものは潔く手放すつもりがある。
それでもきっと難題が山積するだろうから、私が側にいたい気持ちも否めない。
「あぁ、それは私も懸念していたのですが、まぁ………相手方も言い出しにくいこともある―――――特にロイ君は未成年だからね。それにおそらく彼のことだ――――――ぬかりなく切り札を残していると思いますよ。」
「―――――それは確かに………弟のぬかりないところは、怖いくらいわかります。」
「でしょう?」
ダミアンさんが問題ないと笑ってくれたから、私も少し心に閊えていた不安が軽くなった。
ダミアンさんがシャンパンの入ったグラスを私に渡してくれ、軽く口をつける。
ダミアンさんが一口シャンパンを喉に通したあと、避けたかった話題を切り出された。
「―――――さて、今日はぜひ挨拶をしたいと思っていたんですよ。」
「え………?」
「―――――君の心を手に入れている………恋敵であるエルヴィン団長に。」
「そんな、関係では………っ………!」
慌てて否定しようとしたところに、噂をしていた彼が戻ってきた。
「―――――お待たせナナ。………あぁ、そちらはもしかして――――――。」
「初にお目にかかります、調査兵団のエルヴィン・スミス団長。ダミアン・ライオネルと申します。」
「あぁやはり。お若くして公爵を継がれたと噂はかねがね伺っております。初めまして、エルヴィン・スミスと申します。」
2人はにこやかに握手を交わした。