第49章 夜会
「―――――人に名前を聞く時はまず自分から名乗れと、ガキの頃習わなかったかぁ?調査兵団、ナナ・オーウェンズ。」
「!!!」
「近いうちまた会うことになる。今度はくれぐれも背中を取られねぇように気をつけな。そんなナリでふらふらしてると、犯されても文句言えねぇぞ。」
その言葉を残して、気配は消えた。緊張の糸が切れたように、膝が震えてその場に座り込んだ。
「はぁっ………はぁ………っ………!」
切れ味鋭いナイフを全身に突き付けられたような感触。
なんとか呼吸を落ち着かせようとした。
その時、フロアの扉が開き私が探していた人の姿が目に入った。
「――――――ナナ?!」
エルヴィン団長が駆け寄ってくる。
「――――エル、ヴィン……団長………っ……。」
「どうした、何があった?―――――とにかくここは冷える。中に入ろう、立てるか?」
「はい………。」
エルヴィン団長の手を支えに立ち上がろうと試みるが、力が入らない。
情けなくも、腰が抜けていた。
エルヴィン団長はそんな私のことを軽々と抱き上げた。
「―――――この場所で君をこうして抱き上げるのは、2度目だな。」
「―――――?」
小さく呟かれた言葉がなんのことかわからずきょとんとしていると、気付けばフロアの隅のソファに降ろされ、温かい飲み物を渡された。
「大丈夫か?すまない、側を離れてしまった。」
「大丈夫です、ありがとうございます。」
エルヴィン団長はソファに座る私を見上げるように、床に片膝をついて心配そうな目を向ける。