第49章 夜会
「―――――ゆっくりでいい、話せるようなら話してくれ。」
「――――あ、エルヴィン団長……。」
話し始めようとしたとき、遠くでザックレー総統がエルヴィン団長に来い、と指示をしているのが見えた。
どなたかに紹介をしようとしていらっしゃるのだろう。
「行ってください、私はここで待っています。」
「――――わかった、すまない、ナナ。」
私の髪を少し撫でて、エルヴィン団長はザックレー総統の元へ急いだ。
こうして遠巻きに夜会を眺めていると、本当になんの危機も迫っていない、全てが順風満帆に運んでいる国にいるようだ。
そんなことを思いながらぼんやりとしていると、2人の着飾った貴族の女性たちが私の方へ歩み寄ってきた。
私は立ち上がって会釈をした。
「ごきげんよう、オーウェンズ嬢。」
「――――ごきげんよう。恐縮ですが、私は今夜調査兵団のナナ・オーウェンズとしてここにいます。どうぞナナ、と気軽に呼んでください。」
私の言葉に女性たちは笑い合って続けた。
「ではナナ、お尋ねしたいのだけれど、今日はリヴァイ兵士長はおいでではないのかしら。」
「はい、今日は団長と私だけの出席です。」
彼女たちの笑顔は、私には酷く醜く見えた。