第49章 夜会
「―――――エルヴィン、団長………。」
辺りを見回しても、その姿はない。それはそうだ。
この真冬にこのドレスコードで薄着なのに、外に出る人はいないだろう。
諦めてフロアに戻ろうとしたその時、すぐ後ろから声がした―――――――
「――――いーーーぃ女だなぁ。」
その声は中年の男性の声で、とても弾んでいて……でもどこか殺気を纏っている。
そして何より――――――気配なんて、しなかった。
今まで感じたことのない恐怖。
おそらくこの人は、なんの躊躇もなく人を殺せる人だ――――――。そう、直感した。
振り向く間もなく、その指が私の背中を撫で上げた。
「――――――っ……?!」
「最高にそそるなぁ。その白くて細い背中―――――血が似合いそうだ。」
身体が震える。
なぜか顔を見てはいけない気がして、振り向くことを躊躇う。
「ははっ……振り向かねぇのか?―――――賢い女はいい。泣かせた時にそそるからな。」
「…………っ………。」
背後からかけられたその声は、やがて耳元まで辿り着いた。
身を屈めて耳にその唇が寄せられたことから、背が高い人物だと分かる。
私の背中に這わせていた手が腰のあたりに差し込まれた瞬間、ピタ、と止まった。
「―――――ん?これは――――――同じ趣味の野郎がいたな。先客か―――――面白ぇ。」
「………や、めて……っ………あなた……誰……っ……?」
震える声でなんとか抵抗を試みる。