第5章 絶望
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壁外調査から帰還してすぐのことだった。
まるで主力の調査兵団が戦闘に当たれないタイミングを見計らったかのように、ウォール・マリアが破られ、シガンシナ区が巨人によって壊滅したという情報を耳にした。
背筋が凍る感覚を味わったのは、ファーランとイザベルを失ったあの時以来だった。
「ナナ………!」
あいつ、シガンシナ区に住んでいるんじゃなかったのか。無事なのか。
胸中を渦巻く不安を、エルヴィンの大きな声が掻き消していく。この壁外調査で腑抜けのようになった団長に代わり、冷静かつ的確に采配を下す。
「リヴァイ!帰着早々だが、動ける兵員を集めろ!数名トロスト区へ派遣し、現状を把握する!避難民を受け入れたトロスト区の混沌に、駐屯兵団だけでは対処しきれるはずがない。私はこれからハンジを連れて、王都への招集に応じる。こちらの指揮はお前に任せる。」
「……了解だ。エルヴィン。」
俺は数名の兵員を集め、ミケにここに残って壁外調査帰着後の指示をするように伝えたが、ミケは俺に残るように言った。
「俺がトロスト区へ行こう。エルヴィンの次に兵団を指揮すべきは、お前だ、リヴァイ。」
「いや、トロスト区へは俺が行く。絶対だ。」
「…………そうか。承知した。」
スンっと鼻を鳴らし、何かを察したのかミケは少し考えた後に俺の意志を汲んでくれた。俺は三人の兵員を連れて、馬を駆り、トロスト区の避難所を目指した。