第49章 夜会
王宮に着くと、エルヴィン団長がフロアまでエスコートしてくれる。
その大きな扉が開いた瞬間、注がれた視線の数に多少怖じ気づくけれど、エルヴィン団長の補佐官として――――ましてやエルヴィン団長が入れ込むほどの凛とした女性でいるために、背筋を伸ばして堂々と振る舞った。
それにしても慣れない、浴びるような視線に思わず小さく呟いた。
「――――みんな、エルヴィン団長のことをすごく見てます………。」
「違うよ。君を見ているんだ。」
「そんなはずは………。」
「見ていてごらん、君のこのグラスが空くタイミングを、今か今かと推し測る男が周りを囲むよ。」
そう言ってエルヴィン団長は私に白ワインが注がれたグラスを手渡した。
「………別に嬉しくないです。」
「四六時中一緒にいられるわけではない。異性のあしらいかたも社会勉強として学んでおいで。――――――あぁそれと――――――。」
エルヴィン団長が言い淀んだことに加え、周りの喧騒もあって聞き取れなかった私は、自然とその距離を詰めて耳を傾けた。
エルヴィン団長もまたかがんで、耳に触れそうなほど近くでその続きの言葉を囁いた。
「――――――もし困ったことになったらいつでも私のところに逃げてくればいい。」
あぁそうか、これは演出だ。
私が真っ赤になってあたふたしてはいけない。
この男性に好意を向けられていることがさも当然のように、知っていて一切なびかない気高さを演じなければ。
「―――――それは、心強いです。」
慌てふためかず、余裕の微笑みを返した。
エルヴィン団長は私が意図を理解したことを察して、小さく呟いた。
「――――上出来だ。」