第49章 夜会
その日、日が傾く頃にエルヴィン団長と私は王都の宿に着いた。荷物を運び込んで、馬車が来る予定の時間までに身支度をする。
私はドレスに着替え、ハンジさんから教わった方法で髪を編んだ。
片側に髪を寄せて編み込み、癖のある毛先はあえて垂らして遊ばせる。ハンジさんが、髪を上げきってしまうとその艶やかさが生かせないから、と考えてくれた編み方だ。
リヴァイさんからもらった黒い石のピアスを外し、大振りで派手なイヤリングをつける。
慣れないながらも、なんとかメイクを仕上げて深紅の口紅を塗った自分は、なんだか別人のようだ。
身支度を整えてからコートを羽織って待ち合わせたロビーに降りると、そこにはタキシードを着たいつもより更に凛々しいエルヴィン団長の姿があった。
エルヴィン団長は私のヒールの鳴る音に気付いたのか、振り返ると、私を見て目を見開いて硬直した。
「お待たせしました。」
「…………。」
「エルヴィン団長…………?」
あまりに何も発なさいので、リクエストされた身嗜みを叶えられていないのかと不安になり、近付いてその瞳を覗き込んだ。
「変、ですか………?」
私の言葉にようやくハッとした様子で口を開いた。
「――――すまない、あまりに――――美しくて――――。」
「団長のリクエストには、合格していますか?」
「ああ。期待以上だ。」
その言葉にホッと胸を撫で下ろした。エルヴィン団長は軽く会釈して私に手を差し伸べた。
「お手を。」
「恐縮です……。」
手を取られて馬車に乗り込み、王宮へと向かった。外には雪が舞っていて、私が小さく呑んだ息は、とてもとても冷たかった。