第48章 夜会前夜 ※
「女らしくいろと言われるのが苦痛だったなぁ。私は機械を弄るのが好きでね。隠れて時計やオルゴール、あらゆるものを分解してた。」
「ハンジさんの知的好奇心の強さは、幼い頃からだったんですね。小さい頃出会っていたら仲良くなれたと思います、私たち。」
「そうだね。ナナはそう言ってくれるけど、私の両親は私のことがさぞ不気味だったんだろうね、強く反対されて――――全てを禁じられたよ。あの頃の私はまるでお人形みたいだった。」
ハンジさんの気質を知っていれば、その過去がいかに窮屈なものだったかは想像に容易かった。
でもこのまっすぐなハンジさんは、きっと期待に応えようとしていたのだろう。器用に私の髪を結えるのも、過去に "女らしくいる" 努力をしていたからなのだと思った。
「あまりに窮屈な毎日から逃げ出してその足で訓練兵に志願して今に至るんだけど……3年くらい前かな、両親がもう長くなく、家に戻れという手紙が届いてね。すごく…悩んでた。」
「…………ご両親、が………。」
「そんな時にリヴァイがね、一言言ったんだ。」
「……………。」
「『てめぇは何のために生きてる。』って。」
リヴァイさん自身が地下街にいた時から探し続けていた生きる意味。それを同じように悩んでいたハンジさんに問いかけたのか。
ハンジさんはとにかくその過去を愛おしそうに、温かいものであるように大切に話してくれた。
「その時腹を括れたんだ。私の人生は私のもので、私にはこの調査兵団でやるべきことがあるんだって。―――――だからリヴァイは、私にとって戦友で、親友で、家族で、尊敬する兵士で。心から愛する存在だ。」
私の知らない2人の絆が愛おしくて、そして羨ましい。
温かい気持ちでハンジさんを鏡越しに見つめると、ハンジさんは背中から抱き締めてくれた。