第48章 夜会前夜 ※
「―――――そうだね。まぁ………エルヴィンが良からぬ事を企んでないといいけど。」
「良からぬこと………?」
「―――――こんな着飾ったナナを見てさ、さすがのエルヴィンでもムラムラ来ちゃうかもしれないじゃん。不意打ちでキスとかされないように……十分気をつけな……!?」
「あっそれはもうされました………。」
「えっマジで?!」
私がはは、と笑い話かのように目を伏せて答えると、ハンジさんは物凄く驚いた顔で固まった。
「はい、最近は隙あらば色気を出してこられるので………心臓が持たないです、私には………刺激が強すぎて………。」
「いやぁ思ってたけど、想像通り奴はムッツリなタイプだよね。―――――それで、今回のドレスコードにまで口を出して来てるわけか。」
しばらく固まった後、ハンジさんは心底面白いといわんばかりに吹きだして笑った。
今回のドレスコードをそこまで気にしてなかったのだけれど、エルヴィン団長から指示があって今に至っている。
『とびきり美しく装って来てくれよ。そうだな、できれば“愛らしい”よりも大人の色気を意識してくれ。』
「ナナを自分好みに染める気か。いい歳して!」
「いえ、あのこれには一応訳があって――――――。」
私はハンジさんに、ライオネル公爵に対してしでかしてしまった事の顛末を話した。