第48章 夜会前夜 ※
年が明けて、帰省していた兵士もほとんどが戻って来た頃、その日私はハンジさんに夜会に参列するためのドレスを選んでもらっていた。
「いやぁごめんね?エルヴィンとナナに出席を押し付けちゃったみたいで……。」
「いえ、大丈夫です。エルヴィン団長から前もって聞いていましたので。」
ハンジさんが私に赤いドレスを宛がっている。なにやらイメージが違ったのか、首をかしげながら反対の手に持ったスカイブルーのドレスと交互に私の身体に沿わせる。
「疫病の蔓延を少しは意識して、招待する数を減らしたのは――――――王政にしてはまだマシな判断だと思います。」
「ん――――――まぁそりゃそうだけどさ、中止にしろって思うよ!私はね。」
想像に過ぎないけれど、ロイがダミアンさんに忠告したのではないかと思う。
ハンジさんが言うように、実際この環境下でパーティーを開くこと自体理解できないけれど、参加する人物のほとんどが名家・旧家で権力と財を持て余し、ウォール・マリアが突破される前からなんら変わらぬ生活を送っている人間ばかりなのだから、中止にするという頭がないのだろう。
ほとほとあきれ果てるばかりだ。
「……本当に、その通りですね。今回はエルヴィン団長の出席だけで良くなったのは、まだ兵団にとっても有り難いことじゃないですか?リヴァイ兵士長やハンジさん、ミケさんの時間を余計に奪わなくて済みますし。」