第47章 繙
ソファに座っていると、湯気と共に紅茶とは違う果実の熟したような香りが立ち上るカップを置いてくれた。
リヴァイさんはいつも通り、グラスに少量の琥珀色の液体を入れている。
私はその二つを交互に見て、質問を投げかけた。
「―――――飲み方が、違うのですか?」
「……あぁ、お前にストレートなんかで飲ませたらすぐ飛ぶだろ。」
「………ストレート……?」
「………原液そのまま飲むってことだ。いつぞやの夜会でハンジの持ってた酒を煽って、意識飛んだだろうが。」
「あぁ、あれがそうだったんですね。これは……?とっても……いい香りです……。」
私は温かいカップを両手で包んで、鼻を近づけた。
「湯で割った。香りも良くて――――――温まるだろう。」
「―――――いただきます。」
香りを楽しみながら恐る恐る口をつけると、口の中で複雑な香味と渋み、アルコールの鼻をつく刺激が折り重なった。けれど飲み干した余韻はとてもやわらかい果実香が心地よく、とても美味しい。
「―――――美味しいです。」
「―――――そうか。」
「そういえば夜会で思い出しましたが、またあるそうですね、年が明けたら―――――新年の夜会が。」
「―――――クソだりぃな。この状況で豚共が集まる意味がわからねぇ。」
「ふふ、私も同じことを思いました。………私もエルヴィン団長の補佐官として同席するとのことで―――――、初めて、父に調査兵団の私として会うことになるかも、しれません。」
「そうか。―――――ロイは来ないのか?」
「ロイは―――――色々……あって………、貴族の方との交流を今は控えているので、来ないと、思います……。」
「―――――……。」
リヴァイさんは黙ってグラスに口をつけた。
身体がポカポカする。と同時に、ふわふわと頭の中に雲が浮かぶような心地になってくる。
頬が熱い、呼吸が早くなる。
――――――エルヴィン団長に残された余熱を隠すのにちょうどいいと、そう思った。