第47章 繙
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――――――呼吸を、鼓動を、整えなければ。
こんな状態でリヴァイさんに会えない。
『本気でお前を落としにくる。心しとけよ。』
いつかリヴァイさんに言われた言葉が蘇る。
大人の本気がこれほど怖いもので、これほど乱されるなんて思わなかった。
よりによって、エルヴィン団長とは相手が悪い。
白旗を振りたくはない。
でも、いざ相対してしまえば、なにも敵わず彼の思惑通りになってしまう。
その結末に、あの片翼のネックレスを再び受け取ってしまう日が、来るのだろうか。
「―――――よぉ、遅かったな。エルヴィンとの話が延びたのか?」
「い、いえ……ちょっと……用事が………。」
「―――――そうか。」
リヴァイさんもまた私服だ。肌に沿う黒い服がとても似合っている。
私がちらりと目をやると、リヴァイさんは私のことをその三白眼でじっと見つめていた。
私の鼓動の早さも、少し火照った身体もおそらくお見通しだ。でも、以前のように無理に暴こうとはしない。
「―――――紅茶、淹れてやる。」
「え、私が………!」
「今日はお前を労う日だ。座ってろ。」
「はい―――――………。」
「あぁそれとも―――――――酒にするか?」
「え………。」
思いもよらない提案に驚いた。
そういえばリヴァイさんは壁外調査の前後には、よくお酒を飲んでいた。
酔ってしまえば、この残酷な世界から少しは逃避できるのだろうか。
「―――――では、少しだけ……。」
「………待ってろ。」