第47章 繙
「――――――素晴らしいな。」
「………………?」
「ナナ。」
「はい。」
「―――――俺は今、過去最高に君を欲している。」
「……は……?!」
ナナがその濃紺の瞳を大きく見開いて驚いた表情を見せた。
「―――――どうした?口説いているんだが?」
「………今、エルヴィン団長………俺って……言いましたか………?」
「―――――ああ。失礼。私、のほうが良かったか?」
「いえ、あの……今日はその……髪型も、服装も………違いますし………、一人称まで違うと、まるで――――――別人のようで………驚き、ました……。」
目を逸らしたその顔は、わずかに頬を上気させている。俺を男として意識している。悪くない反応だ。
「ナナ、コーヒーをもう一杯、淹れてくれるか。」
「は、はい……!」
ナナが急いで立ち上がり、俺のほうに寄ってカップを手にとろうと手を伸ばした。
「―――――君を引き寄せるのに一番効果的な口実だな。」
「…………え、あっ………!」
ナナの腕を引く。
その腕は、いつもの兵服のジャケット越しとは違い、その腕の華奢さがより伝わる。壁外調査のダメージでまた痩せたのか、その身体はとても軽い。
簡単に俺の膝の上に倒れ込んだ。
「―――――力で無理にはしないって、言いました……!」
「すまない、想像以上に君が軽くて―――――そんな強く引いたつもりはなかった。大丈夫か、ちゃんと食べられているのか?」
ナナの頭から頬に手を添えると、ぴく、と一瞬目を閉じて恥ずかしそうに逸らされた。