第47章 繙
それからはしばらく辞典を眺めながら、目に留まったものについてナナに記載されている言葉の意味を聞いたり、2人で考察したりを繰り返した。
気が付けばゆうに3時間近くが経っていて、日が傾き始めている。
「――――――ここまで知ると、余計に壁の外に人類がいることを期待してしまうな。」
「――――――はい、こんなにも進歩した文明があったのに、今この世界に不思議なほどそれが齎されていないことが――――――、まして進化を禁じられているこの環境は、やはり普通ではないと、そう思います。」
「私の父の仮説通り、もし王政側がなにか重大な事を隠しているとしたらそれは――――――なんだと、君は思う?」
「―――――先日の壁外調査で巨人の生態を目の当たりにして、一番に浮かんだのは――――――。」
ナナの目に悲痛で想像もしたくないといった表情が浮かぶ。
「巨人は、対人殺戮兵器なのではないかと、そう感じました。」
「―――――そそるね。」
思わず顔が好奇に釣られて笑ってしまう。私の笑みに、ナナは怪訝な表情を見せながらも自身の考えを続けて話した。
「―――――王政がひた隠しにしているのは、例えば自分達で生み出したモノを制御できず―――――結果自分達の首を絞めていることを隠したい……といったことなのか――――――、以前エルヴィン団長が仰ったとおり、もし――――――すでに外の世界の何者かが紛れているなら、ここは――――――大きな実験場だということも、考えられます。―――――自由を手に入れるために、私は知りたいです。この世の真実を。」
ナナが私の目を見てその恐ろしい考察を話す。
背中が逆なでされたかのようにゾクゾクした。
この世界は残酷だ。
それを上回る残酷な想像ができる女性に――――――ましてそれを確かめたいと願うほどの強さを持った女性など、今までに到底出会ったこともない。