第47章 繙
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ナナが書物をテーブルに置いて、コーヒーを淹れる。
抵抗するように、自分の分として紅茶を持ってくるところが可愛らしい。私に心を許している時には同じコーヒーを飲むのに。自分では気づいていないのだろうか、なんともわかりやすい。
――――――正直先日やりすぎたかとは思っていて、今日はもう来ないかもしれないとも思った。危険な男の元に、約束だからと律儀に来るところがまた彼女らしい。
「――――さぁ、始めようか。」
「はい、これが以前見たいとおっしゃっていた、クリスマスの絵本で――――――。」
最初こそ警戒した面持ちだったものの、クリスマスの話をするうちにいつものナナの表情が戻って来た。
「―――――なるほど、ふふ。リヴァイは外の世界で言うところの救世主と同じ日に生まれたのか。」
「そうなんです、私たちにとっても――――――リヴァイさんは救世主と呼ぶに相応しい人だから―――――……不思議、ですね。なにかの因果でしょうか。」
「―――――そしてそれは、その救世主からのクリスマスの贈り物かな?」
耳の飾りを指さして核心をついた質問を投げると、頬を染めて嬉しそうに頷いた。
「―――――妬けるね。」
まったく、自分に好意を向ける男に対して残酷なほどその嬉しそうな表情を隠さない。
兵士の中で噂になっている、『ナナに告白すると盛大にフラれるだけでなく、兵長のことを惚気られて終わる』という様子が容易に想像できる。
リヴァイが可愛がって離したくなくなるわけだ。
頬杖をついてため息を零すと、ナナは他の書物を開いた。