第47章 繙
ペトラが発って、私はまた書物に目を通した。
何度も何度も読んだ本。
おおよそ書いてることも理解できるようになった。小さな日記を手に取って中を開く。ワーナーさんの家ではそこまでしっかりと読むことが出来なかったから。
内容を読んでいくと、ワーナーさんの日記には相当古くから二人の人物が登場していた。
「―――――――アーサー・ウィルソン、フリゲン・ハーレット………。」
私は日記の文字を指でなぞって、ポツリと呟いた。
聞き覚えはまるでないが、ワーナーさんが記したその流れるような字面が、心のどこかで何かひっかかった。
そして更にページをめくっていくと、それまで綺麗に整えて書かれていたページの中に突如、震えるように殴り書かれた文字を見つけた。
私は驚いて目を見張った。
「―――――――えっ……なんで――――――!?」
なぜこの人の名前がワーナーさんのノートに記されているのだろうか。
心臓が音を立てて速さを増していく。
エルヴィン団長と対峙することを怖がっている場合じゃない。きっとエルヴィン団長はこの書物と日記を見れば、なにか重大な事に気付くはずだ。
私は大きな期待と少しの不安を書物と一緒に抱き締めた。