第46章 潜思
いつかロイが言っていた。
寝食を共にし、育てて来た兵士を死ぬと分かっていて刈り出すのは普通の精神状態じゃないと。
調査から帰った後も、エルヴィン団長があまりに当たり前のように一切乱れずにいるから、私は勝手に何も感じないのかと思っていた。
でも―――――――なにも感じないわけがない。
自分が編成した、抜擢した兵士が亡くなって今、何を感じているのだろう。
私はその心の底をほんの少し覗けた気がして、なにか力になりたくて、不躾にもエルヴィン団長の背中に遠慮がちに手を回して、その大きな背中をさすった。
「―――――ナナ…………君の歌が、聞きたい。」
「―――――喜んで。」
この人の心を少しでも癒せればいい。
そう思いながら、癒しの歌を口ずさんだ。
エルヴィン団長はただ静かに目を閉じて、私を抱き締める腕に少し力を込めた。
歌い終わってもまだ、エルヴィン団長は目を開けない。
寝た?どうしよう、と焦りつつも小さく声をかけてみる。
「……エ、ルヴィン、団長……?」
返事がない。
ここのところ徹夜の日もあって、さらに壁外調査――――――眠ってしまうのも無理はない。
どうしよう、なんとかしてこのままソファに横になってもらうには――――――そう考えていると、大きな身体がぐらりと傾いて、私は下敷きになった。