第46章 潜思
「はい。もし北側で明らかに遭遇率が少ないのであれば、巨人の移動速度や移動可能距離から考えても、ウォール・マリア内の巨人は壁の穴からの流入のみと断定できると思います。」
「北側でも同等かそれ以上の遭遇があった場合は?」
「他にも壁に穴が空けられているか――――――もしくは、考えたくはないですが………繁殖する術を持ったか、分裂・人間への感染で巨人化するなどの可能性も―――――。」
「――――――確かに考えたく無いな。だが、ウォール・マリアの壁の穴を塞ぐにしても物資搬入から巨人を討伐しつつの作業となれば、相当な難易度だ。確実に“塞ぐことができれば奪還成功”の筋書きがなければ実行に移せない。―――――確かに、北側の調査は入れるべきかもしれないな。参考になるよ。」
「………良かった、です……。」
私はふっと息を吐いた。
「―――――休憩にしよう。コーヒーを淹れてくれるか?」
「はい。」
コーヒーを淹れてエルヴィン団長の側にカップを置いた。
その瞬間、その手首を大きな手が掴んだ。
驚いてエルヴィン団長の方を見ると、手首から手は離され、私の頬にそっと触れた。
「――――――手をあげて、すまなかった。」
「――――――え…………。」
何のことか一瞬わからなかった。
あぁ、そういえば私が喚き散らしたから――――――軽く頬を打たれたのだったか。
その他の事が頭の中を占めすぎていて、全く気にもしていなかった。
「あぁ………、いえ、そんな………私こそ、取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。」