第5章 絶望
「お嬢様、いくら気乗りしないからと言って、早々に嫌われて早く帰ってカエルの解剖でもしよう、なんて思わないでくださいね。」
「お、思ってないわ……。カエルの……解剖のくだりは………。」
私はハルに目を合わせられず、もごもごと口ごもる。
「もしかしたら、ステキな方かもしれませんよ。前にも申し上げたでしょう?夢を共に追える方を探すため、だと思えば良いのです。」
「もう……見つかったわ。」
私はハルに向けて、柔らかく微笑んだ。
ハルは、驚いた顔をしていた。
「これ以上ない人を見つけたの。だから、これ以上の出会いはもう必要ないの。」
その時、屋敷の前に馬車が止まった。迎えが来たのだ。
私がハルと共に表に出ると、馬車から長身の男性が降りてきた。
年の頃は、リヴァイさんと同じくらいだろうか。
長く、肩までありそうなブロンドを束ね、シンプルな中にも品のある衣服を着ていた。優しい目と、貴族の優雅さを持ち合わせた男性だった。
彼はすぐに私に向かって手を差し出した。
「お迎えにあがりました。」
私は気乗りしないまま彼の手に左手を重ねた。
「初めてお目にかかります。私はダミアン・ライオネル。ナナさん、今日は僕に時間をくださり、ありがとうございます。」