第5章 絶望
リヴァイさんと再会した夜会から四か月。
私は相変わらず、イェーガー先生の元で毎日を忙しく、有意義に過ごしていた。助手という立場から、一人で診察させてもらえる事も増え、毎日が大切な経験となっていた。
王都の病院では、細分化された専門医が数多く存在する。そのため、ある分野に関してはスペシャリストでいられるがために、分野外の治療を進んで行う医師はいなかった。
それに比べて、ここにはいろんな症状の患者さんが来る。ただの風邪から、重傷の患者。末期の重病、妊婦………あらゆる知識を持っていなければ、到底対応することができない。
その日、それはまさに偶然だった。
私は父からの見合い話をどうしても断りきれず、半ば強制的に父の決めた相手と会う場が設けられ、王都に戻ることになっていた。イェーガー先生は往診のため、ウォール・シーナまで出かけていた。
私がお世話になり始めてから、一度も閉めたことのないイェーガーさんの病院を、初めて閉めた日だった。
「くれぐれも粗相のないように接しろ。いいな。相手は、ライオネル公爵家の跡継ぎだぞ。こんな縁談は二度とない。」
「………はい………。」
ハルに髪を結ってもらい、身支度をしている間にも父に何度も釘を刺される。
私はまだ結婚なんてしないと言っているのに。時間がもったいない。早々に嫌われてしまおう。
そんな私の考えはハルにはお見通しのようで、牽制されてしまう。