第46章 潜思
「―――――だらしねぇぞ、ナナ・エイル。」
「…………。」
「何度も言った。仲間が目の前で死ぬのが当然の世界だと。それを承知の上で行ったのはお前の意志だろう。なのになんてザマだ。――――――アウラも浮かばれねぇだろうが。」
「――――――っ……………。」
「悲しむなとは言わない。己の無力さに打ちひしがれようとかまわない。だが、それに飲まれるな。――――――俺がいつもいつも側にいて、引き上げてやれるわけじゃない。自分で折り合いをつけて、自分で起き上がれ。―――――お前にはそれができる。ナナ。」
「――――――私は、なにも……でき、な、かった………。」
「できなかったことばかりに捕われるな。お前がやり遂げたもの、救ったものもあっただろう。事実をちゃんと見ろ。そして考えろ。次にお前がすべきことはなんだ。」
「―――――……できた、こと………救えた、もの………?」
「―――――今回の調査の目的は達成したと聞いた。残酷な環境の中、お前はお前の任務をやり遂げたんだろう?アルトが一命をとりとめたのも、お前がいたからだ。違うか?」
「――――――………私の、いる、意味…………。次に、すべき、こと――――――。」
「……………。」
「――――――どんなに絶望的な……状況でも……っ………、二度と、自分を……見失わない……っ………!」
「―――――そうだ、次に繋げる意志……それが原動力になる。お前は大丈夫だ。」
真っすぐに目を見つめて諭すと、ようやくナナと目が合った。絶望で真っ黒に塗りつぶされていたその瞳に、光が戻った。
「―――――……はい……っ……、リヴァイ兵士長――――――………。」
「――――――それでこそ、俺の女だ。―――――おかえり、ナナ。」
今度こそ生きて帰ったことを確かめるように、強く強く抱き合った。
確かに感じるその鼓動に安堵し、アウラに心から感謝をした。アウラの死は無駄にならない。
こいつはまた一つ強くなり、調査兵団の大きな力になる。
俺はそう信じている。