第46章 潜思
「―――――アウラに、別れを言いにきたのか?」
「――――はい………。」
ナナはぼんやりとした様子で俺の横を通り過ぎ、アウラの側に膝をついた。
震える手で白い布をとってその死に顔を見た瞬間、蹲って肩を震わせた。
「――――――私は、なにも……っ…………できなかった――――――………。」
ナナの叫びに似た泣き声が響く。
やがてそれは、贖罪の言葉に変わる。
「ごめんなさい、アウラさん――――――っ………、ごめ、なさ………っ………、助け、られなくて…………ごめんなさい――――――……………。」
その声を聞いているだけで苦しい。
息が出来てないんじゃないかと思うほど、絞り出されて繰り返されるその言葉に、思わず俺はナナの方に歩み寄ってその身体を抱き締めた。
「――――――もういい。落ち着け。」
「うわぁぁぁあああああっ……………!」
何もかける言葉が見つからず、子供をあやすように抱いて、背中をさすることしかできなかった。
収まるどころか段々と加速していく呼吸に嫌な予感がして、アウラにしがみついて離れようとしないナナを無理矢理引きはがし、抱きかかえて自室に連れ帰った。
ナナをソファに座らせると、案の定呼吸が安定していない。過呼吸だ。
「ナナ、落ち着け。ゆっくり息をしろ。」
俺の言葉が聞こえているのかいないのか、ただ一点を見つめて苦しそうに涙を零し続ける。
「―――――ちっ…………。」
仕方なくその唇を塞いで無理矢理呼吸を止める。
力が全く入らないのか、そのままずる、とソファに倒れ込んだ。唇を離すと、なんとかいつもの呼吸に戻っているが、目に生気がないまま、ぼんやりとしている。