第46章 潜思
ナナバが去ってアウラと2人きりになる。
「――――――調査兵団に対して忠誠心など持たないお前が、本隊を守るために命を懸けて動くなんて、らしくねぇだろ。」
アウラの髪をそっと撫でる。
「俺の、ためか?――――――ナナを、守ろうとしてくれたのか。」
当たり前にその唇は開かず、俺を見ることもない。
「―――――お前はお人好しで馬鹿だと思うが、そんなお前の想いに気付かなかった俺は――――――大馬鹿野郎だ。」
アウラの冷たい身体を少し抱き起こし、壊さないようにそっと抱き締めてその頬に口付ける。
なんて冷たくて、軽い―――――――もうその身体に命が宿っていないことを思い知る。
「――――大切な奴らを守ってくれて、ありがとうアウラ――――――――。」
思い起こせばアウラが俺を初めて誘ってきた時、違和感があった。軽い貞操観念と遊び慣れたような口調で誘って来たかと思えば、その顔は頬を染めて涙を溜めていて、その身体は小さく震えていた。
なぜ俺は気付かなかったのか。
あの軽口が、精一杯のアウラの虚勢だったことに。
愛されていたことにも気づかず、蔑んで弄んだのは俺の方だった。そんなことに気付いても全て今更だ。
「――――――もう少し先になるが―――――あの世でまた会えたら、散々罵ってくれ。」
アウラに白い布を被せ、背を向けて安置所を出ようとした時、そこに立っていたのはナナだった。
ひどくやつれたような顔で、泣き腫らした目をしている。