第45章 一歩
「いやだ、やめて!!まだ、助かるかもしれない……!アウラさんも、一緒に帰る――――――!」
私が取り乱した瞬間、エルヴィン団長の手が私の頬を打った。
驚いてエルヴィン団長を見上げると、その蒼い目が容赦なく私を射る。
「―――――落ち着け。死んだ者のために、今生きている者たちを危険に晒すことは許さない。立て、ナナ。」
「――――――………。」
「君が今やるべきことはなんだ。」
「―――――アウラさんの死亡確認、記録、遺体を……持ち帰れるよう、処置を、します……。」
「―――――そうだ。動け。泣いている暇はない。」
「―――――はい。」
エルヴィン団長は言葉を残して、指揮をとるために本隊へ戻った。ナナバさんが私の肩をさすって、小さく呟いた。
「―――――あたしがついていながら……死なせてしまった………。ナナ、アウラを連れて帰る準備をしよう。」
「………はい。」
アウラさんの目をそっと閉じて、遺体を布でくるんで荷馬車に乗せた。
血を失ったからか脚を失ったからか、その身体はとても小さく軽かった。
アウラさんの愛馬が、その様子を不思議そうにただ見つめている。もう乗せることのない主人を想っているのか、遺体を乗せた荷馬車から離れようとしなかった。