第45章 一歩
「そっか……うん、でも……骨折や内臓に異常はなさそう……。顔の擦り傷は処置をするね。あとは……。」
ペトラのお腹から腰、腿へと視線を下げていくと、ペトラが泣きそうな顔をしている理由は、痛みからではなかったとその時理解した。
ペトラは青い顔を真っ赤にして、どうしようどうしようとおろおろとしている。
「――――必要なら、使って。」
「ナナ、さ………っ……!」
私は負傷者の手当をするための大きな三角巾を手渡した。ペトラの腰回り位なら、覆って結ぶこともできるだろう。
――――――怖かったんだ。当たり前だ。まだ15の女の子が、死に直面したのだから。
「―――――私も怖いよ。私なんて、さっきまでここで吐いてたから。みっともないよね。」
「そんな……ことは……っ……!」
ペトラはすん、と鼻をすすって、手渡した三角巾を立体機動装置に絡まないように巻き付けた。
「騎乗命令が出てる。準備できたら、馬に乗って。」
「はい……!」
ペトラが騎乗した瞬間、遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
「ナナ!!!来てくれ、治療を頼みたい!!!」
ナナバさんの声だ。
「はいっ!!!」
私は馬で駆け出した。
心臓がドクドクと早く打つ。
呼ばれたところに到着して、私は息を飲んだ。
アウラさんが横たわっている。
アウラさんは――――――――――食いちぎられたのか、もうそこに左足はなかった。
骨盤近くまで食いちぎられ、顔が真っ青で目もうつろにひゅ、と辛うじて漏れ出るような呼吸をしている。