第45章 一歩
エルヴィン団長の手が私の頭から離れた瞬間、見張りの隊から信煙弾が2度放たれた。
赤に続いて黒だ。
「――――――奇行種…!」
エルヴィン団長は呟くと、すぐに馬に跨って指示を飛ばした。
「全員騎乗して待機!!私は奇行種の様子を確認しに行く。ミケはここで一時的に私の代わりに本隊の指示に当たれ!ロキはナナバの班に援護!」
「承知した。」
「はっ!!」
ロキさんはすぐに馬で駆け出した。
移動中なら避けて通るが、調査中は本隊に巨人を近づけないようにするために、必ず戦闘が始まる。
あの信煙弾の元で、ナナバさんが、アウラさんが戦っている。
震える指で手綱を握ると、後方からも赤い信煙弾が放たれた。あっちの方角は―――――
「―――――エルドさん……っ……!」
「大丈夫だ、通常種1体ならエルドが必ず食い止める。」
ミケさんは私を落ち着かせるように静かに答えた。
そうだ、こうしている間にも筆を止めないことが私に出来る事だ。
馬の上から、廃村の様子や補給場所として使えそうな場所があるか、拠点の設営が可能な場所は?など細かく観察して記録していく。
30分ほど経っただろうか。
エルドさんの隊の方から、馬で一人かけて来るのは、青い顔をしたペトラだ。
「―――――ペトラ!!!怪我したの……?」
「……っ…ナナさん………。」
ペトラはガタガタと震えていて、顔に擦り傷と、腹部を押さえている。私はすぐに症状を見た。
「―――――ここは、痛い?」
「………っ………少し……。巨人に、吹っ飛ばされて……っ……受け身は、取ったんですけど………!」