第45章 一歩
くまなくその様子を観察しながらノートに書き記していくと、その遺体の山の中に、一瞬キラリと光る物を見た。
「――――――………?」
少し近づいてよく見ると、私はそれを目の前で見たことがある。屋上で私の顔を覗き込んだ時に、その胸元にあった鈍色に光るシルバーのネックレス。
「―――――――――…………っ………!!!」
変わり果てた彼の姿は、白骨化することも腐りきって他の命に還ることも許されず、ただ原型を留めない肉の塊のようにしてそこにあった。
私は崩れ落ちて、吐いた。
「……ぅうっ………はっ………あっ………。」
「――――――ナナ、どうした?」
息も切れ切れに、その物体の元の名を呼ぶ。
「ダ、ン………さん………っ………!」
「―――――ダン………?」
エルヴィン団長は私の背中をさすりながら、ロキさんを呼んだ。
「ロキ。見張りの隊からリンファを呼び戻――――――。」
「大丈夫、です……っ……!」
エルヴィン団長の指示を、途中で遮った。
「申し訳ありません…。大丈夫です、調査と記録を続けます……!やらせて、下さい……っ……!」
「…………。ロキ、すまない、戻っていい。」
「はい。」
「―――――無理しなくていいぞ。」
「いえ、私の―――――仕事です……!」
涙目で遺体の山と向き合う私を、エルヴィン団長はそっと頭を撫でてくれた。
「―――――では、頼んだ。」