第45章 一歩
私は様々な角度から記録・模写をした。
多くが、食い散らかされたと表現するに相応しい状態で遺体が散乱している中、異様な光景が目に飛び込んだ。
多くの遺体が団子状になって山積みになっている。
「―――――――う………っ………。」
団子状になっていたからか、完全に白骨化していない、腐乱したものも混じっていて私は思わず目を閉じて口元を手で覆った。
あまりに、酷い。
なぜこんな風に異常な形状になっているのか……と沸き上がる吐き気を堪えながら考えていると、私の背中を大きな手がそっとさすった。
「―――――大丈夫か。」
「―――――エルヴィン、団長………。」
「顔が青い。―――――いや、それにしても惨いな。」
「―――――これは、なぜ……こんな、ことに………。」
エルヴィン団長はそのむごたらしい光景から目を逸らさずに、観察して、口を開いた。
「巨人が人間をたらふく食った後、吐いた後だ。」
「――――――……っ……!」
知識としては知っていた。
巨人には消化器官がない。
そして何より、栄養を欲して人間を食うわけではない事も。
食わなくたって生きて行けるのに、人間を捕食する意味は何なのか……ハンジさんと散々話し合ったりもした。
けれど―――――――実際にこうしてただ食われ、何に還ることもなくゴミのように吐き捨てられた遺体を見るまでにわかに信じられなかった。
「なんで――――――なんで、人間を捕食する必要が………っ………!」
どこにもぶつけることのできない怒りと悲しみを押さえて、エルヴィン団長に倣ってちゃんとその様子を直視した。
目を背けてはいけない。
彼らの犠牲を次の何かに繋げるために、何一つヒントを見逃さない―――――――。