第45章 一歩
出陣形態をとると、私のすぐそばにミケさんがいる。
その姿はとても凛々しくて、いてくれるだけで安心する。
そういえば――――――ちゃんとお礼を言ってなかったことを思い出し、ミケさんに小さく声をかけた。
「ミケさん。」
「なんだ。」
「こんな時にすみません。―――――奪還作戦では、あの………実は母がミケさんの班の医師として同行していて………無事帰還することができました。ありがとうございました。」
「あぁ。―――――ナナは、母親にそっくりだな。」
「はい、よく言われます。気付いていらっしゃったんですね。」
「―――――助けたのも気付いたのも俺じゃない。リヴァイだ。」
「――――――え………?」
リヴァイさんとお母様が、奪還作戦で会った――――――?なんて不思議なことが起きるんだろう。リヴァイさんは別行動していたはずじゃ―――――……
「一瞬でナナの母親だと理解し、俺に預けた。―――――帰ったら、リヴァイに聞いてみるといい。」
「はい………!」
「ナナの母も、負傷した兵士を数多く救ってくれた。――――――今回はナナ、頼むぞ。」
「はい!!!!」
ミケさんのその言葉は私を一層鼓舞してくれた。
生きて帰るのはもちろん、私にしかできないことを、やってみせる。
背筋が伸びた次の瞬間、エルヴィン団長とリヴァイ兵士長が出発の合図を示し合わせた。
「―――――壁外調査を開始する!開門!!!!!!」
エルヴィン団長の号令で、一斉に駆け出す。
門をくぐったそこは、ついこの間まで人間が平和に暮らしていたところのはずなのに。
まるで違った世界のように、門の外に見上げた空はとても高く広くて、この空の続く先の遥か遠く――――――異国の地に思いを馳せた。