• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第45章 一歩





「―――――ナナが立体機動も、体力づくりも頑張ってきたから今ここにいるんだ。やれることをやって、諦めなければ――――――絶対また帰って来れるから。気を強く持って、行っておいで。」



いつもより落ち着いた、説得力のある口調でまっすぐに私を見つめて、ハンジさんはその不安を拭ってくれた。

大丈夫だと、そう思える。



「はい!!」



ハンジさんは笑って私の頭を撫でて、次の兵士に声をかけに行った。一人ひとりの不安を拭ってくれる、そんなところが大好きだ。


ちら、と目をやると、リヴァイ兵士長も一人ずつに声をかけているのがわかる。

ペトラが声をかけられ、頬を赤くしながらわたわたと答える様子が目に入る。

エルヴィン団長が言っていた。

前のリヴァイさんだったら、そんなことはしなかったのかもしれない。彼の中で大切にしたい人が増えていくなら、そんなに嬉しいことはない。

一人ひとりに声をかけ、リヴァイさんが私のところに歩み寄ってきた。



「―――――ナナ・エイル。」

「はいっ………。」

「装備の点検は、してんだろうな。」

「ぬかりなく。」



リヴァイ兵士長が足元から私の装備を確認しながら、その目線が目から耳に移された瞬間、ごくわずかに口元が笑ったように見えた。



「お前の最重要任務は、疫病に関する情報の収集と観察・記録だ。―――――他の誰にもできない。頼んだぞ。」

「はい。」



ただただそれだけの短いやりとりを終えて、私の横を通り過ぎる瞬間、指先が耳たぶの石に触れた。






「―――――待ってる。生きて帰れよ。」






必ず、生きて帰る。

強くそう暗示をかけられたように、手の震えが不思議と止まっていた。

/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp