第42章 急場
「兵長は知らないかもしれませんが、ナナが兵長のクラバット外してから大変なんすよ。ナナを狙う輩が多くて。俺とリンファで徹底して威嚇してるんですよ、褒めて欲しいっす。」
「―――――そりゃご苦労なことだな。」
「でも―――――良かった。」
サッシュは優しい目をしつつ、切なげに少し細めてその目を伏せた。
「なにがだ。」
「ナナはリヴァイ兵長のことが―――――――本当に、好きでたまらないから。――――悔しいけど、あんたに向けてる笑顔が、一番可愛いんだよ。」
「…………。」
サッシュが少し目を逸らして、少しの間を以って気まずそうに口を開いた。
「あの………ナナが過呼吸起こした日――――――。」
「………あ?医務室から出て来たお前に問い詰めてもなにも吐かなかったくせに、今更言い訳でもしたいのか。」
「いやっ、あの時はちょっと動転もしてて……、俺、ナナに思い出させたくない事聞いちまったのかなって………。ナナに直接聞くのも………怖くて………。」
「――――――思い出させたくない事………?」
「大した話はしてないんですけど………、疫病のこととか………弟のこと――――――そう、弟のことを話し始めたらあいつ、急に息ができなくなって―――――――。」
息ができなくなるほどの出来事とロイが絡んでる?
ナナが自分を守れたら良かったと言った、無理矢理ヤられた相手を頑なに伏せていたこと――――――、そして関係を持ったことで衰弱するほど自分を責めてしまう相手―――――――――
俺の中で、嫌な仮説が組み上がっていく。
――――――だが、これを口に出すことはない。