第42章 急場
「――――――このことは誰にも言うな、二度と。」
「え………。」
「余計な詮索が、あいつをより傷付ける。いつも通りに振る舞え。俺に言ったことも、漏らすなよ。」
「は、はい………。」
「口が軽い男は――――――――同郷の幼馴染にも愛想を尽かされるぞ。」
「――――――なっ……!それ、誰のこと……っ………!」
サッシュは顔を真っ赤にして動揺している。全く戦闘能力は高いがこいつの頭の悪さと純粋さには呆れを通り越して同情する。
だが、ナナを大事に思う気持ちは本物だ。
これ以上ナナが守りたい秘密を漏らすようなことはしねぇだろう。
もしこの仮説が事実だったとしたら。
あいつが俺に知られることを極端に嫌がった理由も理解できる。
真実を知りたい欲が、無いわけじゃない。
だがあいつが守りたいものを暴くことは、二度としないと誓った。
優しく愛せるようになりたい。
自分の欲を押し付けて受け入れさせるのではなく、慈しみ、尊重し、支える、共に歩むに相応しい男に―――――――俺はなりたい。