第42章 急場
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あの日、ナナと距離を置くための話をした日から、ナナとの関係性が少し変わった。
俺は自分のしでかした事と、ナナの態度や行動から推測してナナと距離を置くことを勝手に決めていた。
それが、ナナを守るうえで正しい判断だと疑わなかった。そう、思い込もうとしていた。自分の中の卑怯で弱い部分を見せないように。
それをあいつが泣きながら真っ向から否定してきたことで、俺はいかに自分が独りよがりな考え方をしていたのか、あいつの本心をちゃんと理解していなかったのか思い知った。
何度間違おうとも、すれ違おうとも、ナナは俺と腹を割って向き合う覚悟があるようだ。
そこまで想われていることが小さな自信になり、俺の中の下らない支配欲と独占欲を少し解いた。
縛り付ける事をやめ、ナナと向き合い、ナナを信じる。
時にそれは苦しくもどかしいが、ナナが心底嬉しそうに笑ったから、きっとそれが俺たちにとって良い形なのだろうと思える。
「――――――ナナと寄り、戻したんすか。」
ナナとのやりとりを見ていたのか、帰り道に声をかけてきたのはサッシュだった。
「………寄りを戻すもなにも、あいつはずっと俺の女だ。」
威嚇の意を込めて鋭く目線をやったが、サッシュは動じない。
「うわ、威圧すんのやめてくださいよ。別にナナをかっさらおうなんて思ってないんで。」
「……てめぇごときに奪われるとも思ってねぇよ。」
「……いちいち口が悪いんだよなぁ、うちの兵長は。」
「あ?」