第40章 甘露
「本当に、美味しいです………!」
「それは良かった。持ち帰ってもいいし、ここに置いて執務の間に食べてもいい。好きなようにしてくれ。」
「……ひとつ、リンファにあげても、いいですか……?」
「かまわないよ。」
その言葉に胸が弾む。
「――――リヴァイにはいいのか?」
エルヴィン団長の意地悪な問に対して、私は過去を思い返した。
「いいんです。リヴァイさ……兵士長は、甘い物は食べないって……言っていましたので……。」
「そうか。」
エルヴィン団長の真似をしてブラックのコーヒーは、やはりその苦味にどうも慣れないなと思いつつ、エルヴィン団長が用意してくれたお菓子と一緒に食べると、甘味と相まって奥深さや香ばしさが増し、コーヒーも悪くない、そう思った。
「そうだ、さっそくで悪いが――――――来月は新年の夜会が王宮で行われる。そこには、リヴァイとハンジ・ミケを伴って出席が決まっている。君も、来てもらうよ。調査兵団のナナ・エイルとしての初めての夜会デビューだな。」
「はい。承知しました。―――――それにしても、この状況で……パーティー……ですか。」
「そうだな、本当に同じ世界に生きているのか、たまに不思議に思うことがあるよ。」
エルヴィン団長は皮肉って笑った。
「――――君との時間はあっという間に過ぎてしまうな。さて、仕事に戻るとしようか。」
「はい。」
そう言ってエルヴィン団長は時計を見た。
「いや――――まだあと1分ある。」
「??」
エルヴィン団長は手を招いて、ニコニコと微笑む。
これは、前もうかつに近づいてしまって後悔した……あのパターンかもしれない……と、立ち上がって側に寄るも、若干警戒して距離をとった。