第40章 甘露
高級そうな素材で作られた箱を開けると、そこにはナッツやドライフルーツがふんだんに使われた、いかにも高級そうな焼き菓子が入っていた。
どれも見目麗しく、王都にいた時にもこんな上質なお菓子はそうそう食べたことがなかった。
「うわぁ………っ………!」
「ふふ………。」
「??」
エルヴィン団長が声を出して笑うので、私は何かあったのかと目線を上げた。
「―――――いやすまない。君があまりにも目を輝かすから……可愛くて、つい。」
「―――――これ、どうしたのですか?」
「……頂きものだよ。」
カップに口をつけながら言うエルヴィン団長の言葉に反応する。
これは、いつもの“優しい嘘”だ。
「――――――うそつき。」
私が言うと、エルヴィン団長は驚かずに嬉しそうな視線を向ける。
「―――――なぜそう思う?」
「エルヴィン団長の嘘は、いつも優しいから。」
「―――――参った。そうだよ、頑張った君を散々甘やかしたくて用意した。甘い物が嫌いじゃないといいんだが。」
「餌付けされるみたいで恥ずかしいですが……だ、大好きです……!」
「……素直で大変よろしい。」
ははっと笑って、エルヴィン団長はまたカップに口を付けた。私は箱からお菓子を一つ取り出して、エルヴィン団長に差し出した。
「―――――私はいいよ、君のものだ。」
「私が、エルヴィン団長と一緒に食べたいです。一人よりも嬉しい気持ちを分かち合える方が、もっと美味しいので。」
「そうか、ではいただこう。」
エルヴィン団長はまた柔らかく笑って、2人で贅沢なティータイムを過ごした。