第40章 甘露
午後は訓練の様子を見に行った。
会いたい話したい人がいすぎて困ってしまう。
以前よりも立体機動が格段に上達しているのは、ぺトラとオルオだ。私は大きく二人に手を振ると、遠くでオルオがピョンピョンと飛び跳ね、それをぺトラが冷めた目で見ている。相変わらずの2人だ。
そんな2人を微笑ましく見ていると、後ろから名前を呼ばれた。
「ナナ、帰ったんだな!」
振り返るとそこには、エルドさんの姿があった。
「エルドさん!!無事、回復されて良かったです………!」
疫病で早期に隔離された人たちの中にあったエルドさんの名前。心配でならなかった。
私はエルドさんに駆け寄り、顔を見上げて尋ねた。
「身体はもう大丈夫ですか………?」
「ああ、もうすっかりだ。―――――ナナが早々に疫病の検査と隔離を進言したって聞いたよ。ほんと、ありがとな。――――――ニナがあんなことになっちまって………正直怖かったが、隔離してくれたことで……大事な仲間にうつす心配をせずに療養できて良かった。」
「そう、ですか………。」
「ナナはもう調査兵団に欠かせない存在だ。―――――帰って来てくれて嬉しい。おかえり。」
「………恐縮です……!」
エルドさんは少しかがんで、悪戯に微笑みながら私に耳打ちをした。
「―――――ナナがいない間の兵長のしょんぼり具合を見せてやりたかったよ。」
「それは……とても興味があります。」
私は笑った。
エルドさんも笑ってくれて、またこの笑顔が見られたことに、少しだけ頑張った自分を褒めてあげることができそうだと、そう思う。