第40章 甘露
エルヴィン団長への報告が早く終わったため、団長室を出てから、疫病に感染した兵士を隔離している舎へ向かった。
もう随分感染者は少なくなり、いずれも容体は安定しているそうだ。
このまま感染対策を続けて感染者が減り、さらにロイの研究が進んで薬が開発できれば、この隔離病棟もいらなくなる。
それまでなんとか、持ちこたえなくては。
そう思いながら感染対策に口と鼻をハンカチで覆い、建物に入った。すると医療班の2人がすぐに気づき、私のほうへ駆け寄って来た。
「ナナさん!!!」
「ナターシャ!ゾーイ!!」
私は二人を抱きしめた。
「よく、お戻りで………。」
「おかえりなさい……!」
「長く不在にしてごめんね、そして本当にありがとう……!あなた達のおかげで、調査兵団に大きく疫病が蔓延せずに済んだ。」
2人の頭を撫でると、ナターシャの目に涙が滲む。いつもクールで冷静なナターシャが涙を見せたことに、私は動揺した。
「――――どうしたの、ナターシャ………。」
「―――――――ニナ、さんを………助け、られなくて…………!」
ナターシャの言葉に、ゾーイも涙する。
どんなに手を尽くしても、打ち勝てないことがある。
元々医療従事者でもない彼女たちに、人の命を預かる重すぎる役割を担わせてしまったことが申し訳なくなる。
「―――――どんなに頑張っても、勝てない時も、あるの―――――――。決して、あなた達のせいじゃない………!」
2人をぎゅっと抱きしめ、この数か月の苦労をねぎらい、精一杯の感謝を伝えた。