第40章 甘露
「まだ何か心配が?」
「―――――いえ。ただ――――――。」
私は自分のポケットから小箱を取り出して、蓋を開けた。
「―――――今日は、これを、お返ししようと……思って……。」
更に小箱から取り出したのは、翼のネックレス。エルヴィン団長は意図を探るように、私の目を見た。
「―――――気に入らなかったか?」
「いえ………違います……、ただ……そのお気持ちを受け取っていないのに、やはり贈り物だけ受け取るのはいけないと思いました。それに―――――私はもう、そのネックレスをつけることはありません。」
エルヴィン団長のこの目は苦手だ。
真実にいくら靄をかけたように話しても、すぐに真意を見透かされてしまうから。
「――――――リヴァイの嫉妬は怖かったか。」
「――――――っ………!」
――――――なにもかも、分かっているのか。本当にこの人は怖い。絶対に敵に回したくない人だ。
「――――――無責任な贈り物だったね。すまなかった。」
「…………。」
私はただ俯いた。エルヴィン団長は静かに小箱を受け取ってくれた。