第40章 甘露
朝食を終えてエルヴィン団長との約束どおり団長室に行くと、部屋に入る前から中から大きな声がする。
この声は、ハンジさんだ。
私は扉をノックすると、扉を開けた。
「失礼します。」
「あぁナナ!!!!おかえり!!!!」
「ハンジさん!!」
ハンジさんが大きく腕を広げてくれるので、私は迷わず抱きついて甘えた。
「ナナ、調査兵団を疫病から守ってくれて、ありがとうね!さすがはナナだ。私たちは、ナナのことが誇らしいよ。」
「身に余るお言葉です。……弟と協力して、乗り越えられました。」
「おやナナ、昨日はゆっくり休めたのか?随分体調が良さそうだ。」
エルヴィン団長がにこやかに私に目線を向けた。
「はい、ご心配をおかけしました。」
「あっ、そうだ私はもう訓練に出るけど、エルヴィン!あの件!!あの子は私にちょうだいね!!絶対だよ!!約束だからね!!!」
「決定事項ではないが、考慮はしよう。」
「ぜひよろしく頼むよ!じゃあナナ、また時間ができたら研究室にも寄ってよね!あなたがいない間に随分色々と考察もしたんだからさ!」
「はい!」
ハンジさんは私の頭を撫で、エルヴィン団長に強く念押しして団長室を出た。
「さてナナ、改めてお帰り。」
「……ただいま、戻りました。」
エルヴィン団長と向かい合ってソファに座る。なんだか『ただいま』と言うのが恥ずかしくて嬉しくて、少し照れてしまう。
「――――それで、家のほうはもう大丈夫なのか?」
「―――――はい、今のところは……。」
私はことのいきさつを話した。
ロイが今までしてきたことの中には、王政の中心にはびこる、良くないものとの関わりが少なからずあったからだ。
―――――もちろん、私がされたことに関しては触れていない。
「―――――なかなかの曲者だな、弟君は。」
エルヴィン団長は少し驚いたような表情を見せた。