第39章 認容
過呼吸なんてそうそう出ないのに、なんで―――――――自分で思うよりも、私は心を蝕まれているのかもしれない。
誰にも話さず、一人で抱えるのが辛い―――――誰かに、聞いて欲しい。
「ナナ、今日はここで休んでいいって。あたし達は帰るから―――――――。」
言いかけたリンファの服の裾を、少し引っ張った。
「…………?どうした?」
「………リンファにしか、話せない………、嫌な感情にさせてしまうかもしれないけど……っ……聞いて、欲しい………っ………!」
私が声を詰まらせて言ったからか、リンファは驚いて私の手を握った。
「―――――頼ってくれて、嬉しい。話して?いくらでも聞くよ。」
サッシュさんはそんな私たちを優しい目で見つめて、静かに部屋を後にした。
扉が閉められた瞬間、外で少しの話声が聞こえた気がしたが、やがてそれは遠巻きに消えて行った。
私はベッドの中で重い口を開いた。
私の家は家族として機能していなかったこと、弟を知らず知らずのうちに歪ませ追い込んでいたということ、弟は家族と世界を壊したくて――――――私を何度も抱いたこと。
リンファは、青い顔で絶句した。
「―――――身体は、大丈夫なの……?」
「うん………。」
「そんな、だって………何度も――――――……妊娠の………可能性は………?」
「―――――月のものは来てるから、大丈夫………。」
ロイが私に飲ませていた“僕の事を二度と忘れなくなる薬”――――――――あれは、おそらく経口の避妊薬だ。
ロイの中の最後の僅かな良心だったのだろう。