第39章 認容
しばらくしてリンファが部屋に戻ってくると、その後ろからサッシュさんが顔を出した。
「ナナ!よく戻ったな!」
「あ。サッシュさん……!お久しぶりです…!」
「悪いナナ、こいつが部屋に行くって聞かなくてさ。ナナ体調良くないから断ったのに…!」
リンファが腕を組んでサッシュさんを疎ましそうに睨む。
でもその目にはどこか愛情が籠っていて、私は温かい気持ちになる。
「リンファもサッシュさんも、壁外調査から無事戻られて――――――本当に良かったです。」
「ああ。―――――だが酷かったよ……あちこちから悲鳴が聞こえてさ………。」
「匂いも酷かったしな………俺もしばらくトラウマだったよ……平野に人間が―――――散らかっててよ………。」
2人そろって絶望を見て来たような顔で俯いた。
「そうですか………。」
「王都はどうだったんだ?」
「――――何も変わらずです。他の街の荒廃具合が嘘のように……少し、その格差が怖くなりました……。」
「―――――今回の作戦も、結局のところ壁奪還なんて嘘八百で、口減らしのためだって、みんな言ってるよ………。」
「信用ならねぇ王政だよな。」
口々に王政への不満が出て来る。
無理もない。
どうやったって民衆の事を考えているとは思えない保身上位の政策の数々に嫌気がさす。
「――――まぁ疫病の防止だけは、動きが早かったよな。そこは認める。もっとひどいことになってたかもしれないしな。」
サッシュさんが腕を組んでうんうんと頷きながら、疫病対策について言及した。