第39章 認容
「その通りだ。―――――色々あった。確かに俺はクソみてぇな事をした。昨日の俺を俺自身、殺してやりたいと思うくらいにな。」
「―――――実に不愉快だな。」
「お前なら―――――――。」
お前なら、ナナを傷付けずに愛せるのか?そう問おうとするが、言葉が続かない。
「……なんだ。」
「………いや、なんでもねえ。」
「…………ナナにはあとでゆっくりと話を聞くが、状況だけ簡潔に話せ。ナナの生家の状況は好転していたか?」
「ああ。例の病に伏せたという世話係とも話したが、問題あるようには見えなかった。弟も―――――調査兵団にナナを預けることを承諾している。」
「―――――そうか。ナナは、頑張ったんだな。詳しく聞いて、たくさん褒めて甘やかしてやりたい。」
エルヴィンが柔らかく微笑んで漏らした言葉が刺さる。
俺は、ナナが我儘として言い出すまで、その頑張りを認めてやろうとしなかった。
――――会えなかった間のナナを自分に満たすことばかりだった俺とエルヴィンの、器の違いを思い知る。
同時に、翼のネックレスが頭を過った。
「―――――エルヴィン。……招集で王都に出かけた時に―――――ナナに、会ったか?」
俺の問に対して、エルヴィンはまっすぐ俺を見て少しの間をもって、あいまいな表情で返事をした。
「――――――いや―――――?」
「…………そうか。」
「――――――話は以上だ、下がっていい。」
「―――――あぁ。」
俺は敗北感と自責の念が渦巻く胸中を隠しながら、団長室を後にした。