第39章 認容
夕方近く、俺たちは無事に兵舎に帰還した。
訓練を終えたばかりのリンファがナナを見つけると、駆け寄ってきて強く抱きしめた。
団長室の窓を見上げると、エルヴィンが安堵したようにこちらを見つめていた。
「―――――お帰り、ナナ。無事帰れて何よりだ。」
「ただ今戻りました。不在の間は大変なご不便を―――――。」
「いや何を言うんだ。ナナが疫病の対策を事前に伝えてくれたなかったらと思うと、恐ろしい。……自身も大変だっただろうに、疫病を防ぐために尽力し、そして成果を出して凱旋してくれた君を誇りに思うよ。」
頭を下げるナナの肩に、エルヴィンが触れた。
「―――――にしても、随分疲れているように見える。詳しい話は急がない。今日はもう自室に戻ってゆっくり休んでくれ。リヴァイも、迎えご苦労だった。少しだけ別件で残れるか。話したいことがある。」
「ああ。」
「――――では、お言葉に甘えて、失礼します。」
ナナが一礼して団長室を出た。途端に鋭い目が俺に向けられる。
「―――――リヴァイ、ナナの体調不良はお前のせいか?」
「―――――あぁ。俺が抱きつぶした。」
「………呆れたな。ナナはお前の性欲発散のための道具じゃないぞ。そんな事のために迎えに行くことを許可したわけじゃない。」
「―――――性欲発散のために抱いてるわけじゃねぇ。……嫉妬か。」
「―――――そんなくだらないものじゃない。お前が自分の欲を抑えきれずにナナの身体を害するほど求めたのなら、軽蔑に値する。」
エルヴィンが怒りの色を濃くして俺を睨み付けた。