第39章 認容
「もう一つ我儘を言ってもいいですか。」
「―――――ああ。」
「―――――リヴァイさんが私のことを愛せなくなったらちゃんと諦めるから――――、愛してくれている間だけでいい……私と眠る時は、いつもこの腕に抱いて。―――――二度と背中を向けないで………!」
ナナは涙ながらに精一杯の我儘を伝えた。
心臓の奥が、握りつぶされるんじゃないかと思うほど収縮して、苦しい。
―――――俺がお前を愛せなくなる日が来ると思っているのか。
確かに人の気持ちは変わる。確実なものなどなにもない。わかってる。
―――――それでも俺は確信しているんだ、生涯お前以外の女を愛することはないと。
「―――――あぁ。わかった。二度と背を向けないと約束する。」
俺が答えると、ナナは微笑んで俺の胸に顔を埋めた。俺の体温を感じてうとうととし始めたナナを約束通り腕に抱いて、横になる。
「―――――起きたら長距離移動だ。もう少し寝ろ。――――ずっと、こうしてる。」
「………はい………。」
すぐに寝息を立てたナナの額にキスをし、目を閉じた。
地下街は太陽が届かない。そんな中でもおおよその時間がわかるのは、自分に地下街に生きる者の血が色濃く入っているのだと思わせる。
「ナナ、行けるか。」
「はい。」
あれから少し眠って、宿を発った。
地上へ上がると、昇ったばかりの太陽が眩しい。
馬を駆って今度こそ帰路につく。
ナナの顔色が思わしくないのは、明らかに俺のせいだ。何度も休憩を挟み、ナナを休ませながら進む。