第38章 愛欲 ※
リヴァイさんはクラバットを外して真っ白なシャツを脱ぎ捨てた。その身体は相変わらず完璧で、魅入ってしまう。
毒のような色気を纏った魅惑的な身体で、私の上に覆いかぶさり、私を見下ろす。
それでもいつもほど自分の気持ちに素直に彼を求められないのは、後ろめたさがあるからだ。
私はほんの少し、目を伏せて逸らした。
「――――――勘違いするなよ。」
「え…………?」
「こんな場所で、こんな昼間から、こんなことしておいて説得力もクソもねぇが―――――、この行為はただの性欲の発散じゃねぇ。」
「……………?」
どこかバツが悪そうにリヴァイさんは言う。
「――――――お前をくまなく感じたいからだ。無事でいてくれて、こうやってまたこの腕に抱けて、俺は――――――心の底から安堵してる。――――――ナナ。」
その手が私の頬に添えられ、そっと唇が触れるだけの小さな口付けを落とした。
あぁ、きっと私が不安そうにしているから。
性欲の発散の為に抱くわけじゃないと、伝えてくれたのか。
―――――昔からいつだってあなたは、優しい。
「―――――私も、リヴァイさんを感じたいです………。」
「―――――ああ、俺もだ。」
「……会いたかった………っ………!」
「―――――よく戻った。ナナ。」
私が両手を広げてリヴァイさんを受け入れると、ホッとしたように、リヴァイさんはほんの少し、笑った。
愛を伝えるような口付けは、私の唇の感触を楽しむように啄まれ、食まれる。
――――心地よくて、このまま全てを委ねてしまいたい……けれど、ただ私は一つだけどうしても言わなければいけない事がある。
リヴァイさんの口付けを手で防いだ。